4月の入学から現在に至るまでの学習の経過、そして決意表明として、代表者が読み上げます。
抜粋ですが、皆さんの決意をご紹介します。
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入学してすぐの交流研修。地域に暮らす人の声から「訪問記」を全員が作成し、グループでまとめます。
その中から、地域の人々の人生や健康、医療について知り、看護について考えました。
80歳代女性A氏の話では、戦争体験をされた方で、小学校4年生の時大東亜戦争(太平洋戦争)を体験していました。
空襲がひどくなると防空壕に逃げ込んだこと。道端にも死体があり、防空壕の中で蒸し焼きにされて亡くなった方の
姿を怖いと思ったことなど、今も鮮明に覚えていると語ってくれました。
生きていくのに精一杯だったこと、食べるものがなく空腹をしのいだ話などから、戦争の悲惨さや苦しさが想像できました。
戦争とは人々の命を奪う行為であり、二度と戦争をしてはいけないと強く思いました。
交流研修を通じて、一人の方から聞いた話でも、一人ひとり捉え方が違うことに気が付きました。
意見交換をすることで考え方が発展していくことを実感しました。
「ありのまま」とは、聞いたことを書き留めるばかりではなくその言葉から思いを想像することが看護にあたっても大切だと考えました。
5月には、車椅子ウォッチングを実施しました。
車椅子で生活している方が外出する際にどのようなことに不便を感じるのか、自由に移動する権利が保障されているのかを調査するためです。
実際に車椅子で移動してみると、普段は気にならない段差や溝、振動が想像以上に負担になることもわかりました。
公的機関に勤務する車椅子利用者の方に日常生活で困ることを伺うと、「段差が多い」ことを挙げていました。
また、「駅などで困っていたら見ているだけでなく、実際に声をかけてほしい」ともお話しされました。
何ができるかわからなくても、少しでも車椅子の方の力になれることを考えたいと思いました。
「移動する権利の保障」については、実際の経験を通じ、自由に好きな場所へ行くことが限られてしまうことを実感。
車椅子を利用する方が、健康な人と同じように自由に移動し、外出するにはどのようなことができるかを考えていきたいと思います。
7月には基礎看護学実習1-1を行ないました。
患者さんの事実をありのままに捉えること、患者さんが医療や看護にどのような願いや要求を持っているのかを学ぶという目的に沿い、一人ひとりが目標を持ち実習に臨みました。
80歳代女性、腰椎圧迫骨折によって入院しているB氏を受け持った学生。
独居で、洗濯物を干しているときに尻もちをついて転倒したことにより入院となりました。
自宅の庭には大切に育てている蘭の花があり、また飼い犬もいることから
早く退院して帰りたいと話し、毎日何時間もリハビリに取り組んでいました。
辛くないかと尋ねると、「いつもこんなもんよ」と笑って話し、早く
元気になって歩けるようになりたいという希望を強く感じました。
環境整備をしていた際、テーブルの上に内服薬が置いてあるのを見つけ、飲み忘れだろうと
指導者に渡しましたが、それはB氏が飲み忘れのないよう見えるところに置いておくという
工夫でした。そこで、内服薬を入れるBOXを作成。B氏が喜んでくれるように
好きな紫色で飾りつけをし、仕上げの折り紙の花をB氏に貼ってもらうようにお願いしました。
指先が動かないと言いながらも最後までやりきり、完成したときのうれしそうな顔を見て
学生も自然と嬉しくなりました。
B氏の身の回りの環境整備をしたことで、一人で動ける範囲が限られているため、
身の回りに物を置いていたことがわかりました。そこからB氏が内服薬を無くさないように
するための実践に繋がりました。
初めての実習を終えた後は、2つの講演を聞きました。
1人目は憲法学習会で話してくれた弁護士の白神優理子さんです。
「日本国憲法は希望」と掲げ、憲法とは国を縛り、国民を守るものだと学びました。
また、軍事費に約5兆円もの予算が当てられていることを知り、衝撃を受けました。
軍事費に多額の予算が組み込まれているにも関わらず、社会保障費が削減されているからです。
命には格差がないこと、人間は年齢も障害も環境もまったく関係なく、
「人間」という大きなくくりで皆が共存することの大切さを学びました。
この学校に入学してから、看護とは患者さんの人権を守ることが前提にあり、
憲法に基づいて看護を行なうという事を学んできました。
そういった知識がある私達だからこそ、憲法のことや社会のことをもっと学んでいく必要があることが分かりました。
もう1人は、東葛祭で講演をしてくれた女優の有馬理恵さんです。
命の平等と尊厳を描いた「釈迦内柩唄(水上勉氏の著作)」の一人舞台を観劇しました。
差別を受けていた同和地域での生活についての芝居で、火葬場を家業とする家族の
父が亡くなるシーンでは「死んでからも位によって差別されるのか」という場面を見て、
死んでからも人が差別されていたことを知りました。
また、有馬さんは差別する人と戦うのではなく
「差別をしている人の中に入っていく勇気が差別をなくす一歩になる」と話されました。
たくさんの言葉に耳を傾け、話して、差別がなくなるよう向き合っていきたいと思った講演でした。
10月、私たちは基礎看護実習1-2を行ないました。
前回の実習の学び、そして日々の学習での学びを活かし、それぞれが目標を持って実習に臨みました。
80代女性、大腸炎により入院しているC氏。
トイレまでは一人で行けるようにしたいという願いがあり、リハビリを一生懸命行なっており
その姿を見ていて「歩きたい」という思いが伝わり、学生にも勇気をくれました。
またC氏は戦争や東日本大震災の体験を繰り返し話してくれました。
第一原発の近くに住んでいて、役場の人が福島から非難させてくれたその日に第三原発が爆発。
40年間住んだ家も津波で流され、避難先を転々としていて、友達にも会えず、苦労したと
語っていました。当時のことを調べ、家や町が壊れる様子、恐怖や不安を抱えた人たちの姿を見て、
大切に思っていた地域や家などが見る影もなくなる様子が想像できました。
口では言わなかったが、C氏の願いは原発事故が起きる前の生活に戻ることではないかと
考えることができました。生活史を知ることの大切さを改めて感じ、学ぶことができました。
実習を通じて「事実をありのままに捉える難しさ」を改めて痛感しました。
ペアで一人の患者さんを受け持っても、言葉のとらえ方、観察したこと、重要視したことなどが
違っていました。その食い違いから学ぶこともたくさんありました。
お互いのとらえ方を理解したことで、「自分とは違うとらえ方もある」と学ぶことが
でき、理解できたからこそ、「患者さんにより良い実践ができる」という事を実感することができました。
看護師とは、患者さんにとって一番近い存在で、患者さんの発言だけでなく、行動、表情から
何を考え、何を願っているかを捉えることが大切である。
そして、患者さんのありのままを捉えることによって、患者さんの思いを第一に考えて行動できる。
一人ひとりに合った応援を考え、目的を持って実践することにつながると考えた。
患者さんから学ぶという事を忘れず、今後日々の学習に取り組んでいきたい。
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