A氏(女性)は統合失調症で埼玉県内の閉鎖病棟に17年間入院していた。精神医療審査会に退院請求を出すがその都度却下され、医師には「一生居ろ」といわれた。三郷市の弁護士が当番のとき退院希望を取り上げてもらい、東京の人権擁護団体の手助けでみさと協立病院精神科開放病棟に転院となった。
病棟レクで寿司ツアーに参加し「17年ぶりにお寿司がたべれてうれしい!」と感激する姿が忘れられない。1年かけてリハビリし市内の福祉会の協力を得てグループホームに入居。「美しくなりたい」希望が強くダイエットを繰り返したり、友人とショッピングを楽しむ生活。慢性的な症状を抱えながらも「仲間がいることや一人じゃないってことがうれしい」と生き生きしていた。クリニックには定期的に通院。怠薬・拒薬傾向が強く調子を崩して短期間入院することがあったが、9年間支援者に支えられ地域でA氏らしい生活を送ってきた。
しかし60歳をすぎて、頼りにしていた兄と姉を昨年相次いで亡くしたり、腰痛で歩けなくなり大好きな買い物にも行けなくなって生活支援が必要になってしまった。徐々に妄想が強くなり恐怖でグループホームにも居られなくなり失踪。四日目早朝に助けを求めてみさと協立病院に駆け込んできた。「助けて下さい!」その日の内に入院の運びとなった。
人は様々な危機に遭遇し、乗り越えながら生きて行く。A氏の場合親しい兄姉との死別と健康不安という危機にたいする反応を示したにすぎない。障害の有無に関わらず自己実現をめざしてその人らしく生きて行く権利があり、変化と成長の可能性をもっている。その後回復しグループホームへ退院していった。地域の支援者の方々と新たな関係をつくりながら生きて行って欲しいと願っている。
みさと協立病院
外来看護師長 菊地玲子
更新情報