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第106回 自宅で家族と過ごした最期の7日間

代々木訪問看護ステーション 所長 小林隆子

Aさんは、2008年12月の入院から5年半ぶりに、人生の最期を最愛の家族と共に過ごすため、自宅に戻りました。しかし、ご家族にとって、在宅死を選択することになろうとは思いもよらないことでした。

在宅看取りを確認して退院

Aさんは脳梗塞を発症後、H病院、代々木病院、老健施設と入院・入所を繰り返していました。一昨年末に老健に入所後、誤嚥による発熱を繰り返し、ほぼ寝たきりの状態になりました。
今年の4月初めからは、口から食べることができず点滴をしていたところ、老健より転院を強く提起され、急きょ在宅に戻るための調整目的で代々木病院に転院しました。在宅生活の態勢を整え、さらに在宅看取りをご家族と確認して、5日目に自宅に戻ることができました。

自宅でのかけがえのない時間

訪問看護は退院日に開始、皮下点滴を実施しました。その夜は、痰がからんで眠れなかったと妻から話があり、翌日の訪問時に吸引を指導しました。妻から点滴中止の申し出がありましたが、長女は躊躇をしました。その夜、痰がからみ苦しそうなので看て欲しいと連絡が入り訪問しました。痰は少量しか引けないため、これは最期が近くなると現れる症状でもあることをご家族に説明しました。
長女からも点滴は止めたいと申し出があり、中止しました。この後痰がらみは少なく過ごされていました。目を閉じていることが多かったAさんですが、お孫さんが弾くピアノの音に耳を澄まし、入所中は会えなかった兄弟とも会い、自宅に戻って7日目に、家族に囲まれ穏やかに息を引き取りました。Aさんそして家族にとっては、考えてもいなかった自宅での最期でしたが、それぞれにとってかけがえのない時間だったと思います。

在宅生活を支援するチームがあるからこそ

今回のケースは、理想的なほど事態がとてもスムーズに運びました。住まいがあり介護者がいたことも大きかったです。代々木病院に入院できたことから始まり、訪問看護をはじめ、ケアマネ、訪問診療、訪問介護など医療・介護の態勢がすぐに整えられ、連携が良かったこと。そしてこれは、この連携ができる地域だからこそできた特徴でもあると改めて確認できました。また、家族は介護を指導される間もありませんでしたので、医療・介護面での指導はじめ、最期を迎える家族の心のサポートなど、私たち訪問看護師が果たした役割は大きかったと思います。
まだまだ稀なケースですが、これから10年後、20年後、人生の最期を過ごす場所として在宅を選択する人、また選択せざるを得ない人が増えると思われます。この地域には私たち訪問看護をはじめ、在宅支援病院としての代々木病院を中心にした在宅生活を支援するチームがあることを大いに誇りとし、どのような形であれその人らしく生活できるよう、そして最期を迎えられるよう支えていきたいと思います。

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