はたがや協立診療所は、6号通り商店街(東京都渋谷区幡ヶ谷)のはずれに位置し、地域で具合が悪いときにはすぐに受診でき、買い物帰りに定期の薬をもらいに来る患者さんたちが多く、区民健診、土建健診、企業健診も多くの方が利用しています。
園田所長は、地域の介護学習会へ講演に行ったり、医師会とも繋がりがあり、「困ったときは、はたがや診療所に相談できる」と地域の方たちに頼られています。同じ建物の中に、はたがや介護相談ステーションもあります。最近は生活保護の方が増えていますが、受け入れる医療機関は減っています。
ひとり暮らしの高齢者の困難をどう支えているか、事例を通して紹介します。
地域包括支援センター(以下、地域包括)から、「団地で動けなくなり、入院を拒否、往診なら受けると言っている」と連絡が入りました。Aさんを往診すると、腹部がパンパンに腫れ上がり、排泄物もそのままでした。園田所長は、入院の必要性をゆっくりと、Aさんが納得するまで手を握って寄り添い話しました。地域包括の担当者は「感動して目頭が熱くなった」と、友の会の総会で話されたほどです。Aさんは退院後、体調が悪くても入院したくないことが多く、何度も臨時往診、訪問をしながら、寄り添って支えています。
Bさんは高齢の母親と同居、仕事はしていません。母親の体調が悪いとBさんが代わって他院で薬をもらっていました。Bさんが自分の検診の時に母の排泄困難を話したことから、往診が始まりました。家から出たがらない母親を、検診に連れてきたとき、母親は「3年ぶりに外へ出た。こんなに変わったのね」と話しました。往診に入る前に地域包括へ連絡すると、地域包括も引きこもりの親子と認識していました。外部との接触が薄く、担当者が親子にデイサービスを勧めましたが母親が拒否をしているようです。なかなか進んではいないようですが、地域包括と連絡しあうなかで、外部(社会)と少しでも繋がりが持てるよう援助しているところです。
Cさんの場合は、かかりつけは他院でしたが、「ここは便が出ないとき、出してくれると聞いた」と来院しました。レントゲンの結果大腸ファイバーが必要だろうと話したところ、受診に来なくなってしまいました。このケースの反省があり、次のDさんの場合は家についていきました。
地域の方から「言動がおかしい」と言われて受診したDさんは、本人はなぜ来たかがはっきりしませんでしたが、血圧が高く、今後も受診が必要でした。来なくなるといけないと思い、「お家に一緒に行かせて」と頼むと、「この人は怖い」と言いながらも、家まで一緒に帰ることができました。お家は玄関までごみだらけの“ごみ屋敷”でした。
その後、道で会えば声をかけ、「あなたのそばで見ているよ」と、診療所の人が見守っていることを印象づけるよう心がけました。挨拶を返してくれるようになりましたが、火の始末の不安があるということで施設へ入所しました。
このように、地域の方たちと一緒になって支えることが重要で、診療所だけでは成り立ちません。地域的には、訪問看護ステーションやヘルパーステーションも法人外も含めて比較的多くあり連携をしています。「なんでも大丈夫!ではないけど、何とかなるさ」「とにかく、はた診につながってくれれば」の心意気で、これからも頑張ります。
更新情報